2019.4.16 クラスター階層セミナー(東北大学)

講演題目:
「中性子過剰核で見られる殻構造の変化は高運動量核子相関とテンソルブロッキング効果で説明できる!」

講師:谷畑勇夫氏
大阪大学核物理研究センター・特任教授
北航大学大学物理学教室・教授

日時:2019年4月16日(火)14:30~16:00
場所:東北大学理学研究科(北青葉山キャンパス)理学合同B棟721
のH-03の建物の7階
*セミナーは日本語で行います

要旨:
原子核内の二核子間のテンソル力を明らさまに取り扱った核モデルを考えると、不安定核ビームによる実験で次々に発見されてきた新しいマジックナンバー(N=6,14,32,34)が、すべて説明できることがわかった。これは核物質や原子核の飽和性を作り出しているのと同じ仕組みで、テンソル力のブロッキングが重要な役割を果たしているからである。
原子核の束縛エネルギーはその大きな部分が高運動量で相関している2核子間のテンソル力によるものであることはよく知られている。例えば重陽子におけるD波が関与した束縛エネルギーである。しかしながらこれまでの原子核のモデルは中心力を主に取り扱いテンソル力は表だっては使ってこなかった。テンソル力をあからさまに取り入れると、相関した二核子の励起を基底状態の中にも取り入れる必要がある。その励起は相対的に大きな運動量を持った陽子・中性子対で起こり、どのような殻が占有されているかでその強さは大きく変化する。この二核子励起が起こるテンソル力で大きな束縛エネルギーが得られるが、核子の配置によってはその励起がブロックされテンソル力による束縛エネルギーが失われる。このような効果を殻軌道ごとに見ていくと、新しいマジックナンバーは、すべてこのブロッキングの効果で現れていることが理解できた。
この話では、まず核内のテンソル相関の実験的現状を簡単に話し、その後テンソルのブロッキング効果を取り入れるモデルとしてテンソルブロッキング殻模型を提唱する。そのモデルを用いて新しいマジックナンバーがどのように現れるのか、古いマジックナンバーが何故消えるのか、また、その他の中性子過剰核における異常な軌道の変化が何故起こるのかについて説明をする。

世話人:東北大理 田村裕和 tamura_at_lambda.phys.tohoku.ac.jp
(_at_は@に変更してください)