シェルモデル (shell model)
参考文献
- 以下のテキスト(講義資料)を参考に簡単なシェルモデル計算を行う。
すべてのテキストで 18O の例が出てくる(Introductory Nuclear Physics では問題 7-4 に出てくる)。16O の doubly closed shell のコアにヴァレンス中性子が 2 個のシンプルな系なので、例として良く使われるようだ。
計算
18O の基底状態の binding energy と励起状態のエネルギーを USD 相互作用を用いて計算する。この相互作用が適用されるモデルスペースは sd-shell (0d3/2, 0d5/2, 1s1/2) である。USD 相互作用を記述するパラメータファイルは Nushell や oxbash に同梱されており、sps/w.int というファイルである。中身を見ると
! The "USD" interaction of B. H. Wildenthal for A=18 ! For other A the two-body matrix elements should be multiplied ! by (18/A)**(0.3) and the single-particle matrix elements ! are mass independent. In OXBASH the multiplication is done ! automatically in the subroutine SHSP.FOR ! ERROR CHANGED AUG 1988 (2 2 2 1 2 1 -0.2878000) ! ORDER: 1 = 1D3/2 2 = 1D5/2 3 = 2S1/2 ! The following spe give values of 15.63, 21.75 and 18.13 relative to ! 40Ca (1.612 -2.684 -2.967) 63 1.6465800 -3.9477999 -3.1635399 1 1 1 1 0 1 -2.1845000 1 1 1 1 1 0 -1.4151000 1 1 1 1 2 1 -0.0665000 1 1 1 1 3 0 -2.8842001 2 1 1 1 1 0 0.5647000 2 1 1 1 2 1 -0.6149000 ... ... 3 3 3 1 1 0 1.2501000 3 3 3 3 0 1 -2.1245999
となっており、! で始まる行はコメント行であり無視する。 コメント行を飛ばして考えたときの 1 行目では、 1 番目の整数が two-body matrix element (TBME) の数、2 - 4 番目の実数が 0d3/2, 0d5/2, 1s1/2 軌道の single-paricle energy (SPE) (MeV 単位) を表す。SPE と 1 粒子軌道との対応は sps/sd.sp というファイルを参照している?2 行目から 64 (= 63 + 1) 行目は TBME (MeV 単位) を表す。書式は
となっており、J と T はそれぞれ spin と isospin を表す。j1 - j4 は 1 粒子軌道を表す整数が入り、1 : 0d3/2, 2 : 0d5/2, 3 : 1s1/2, という対応となっている。整数と1 粒子軌道の対応はやはり sps/sd.sp を見ている? sps/label.dat というファイルにも書いてある。ちなみにこの有効相互作用の SPEs (3個) と TBMEs (63 個) は元の論文 (B. H. Wildenthal, Prog. Part. Nucl. Phys. 11, 5 (1984)) や USDA, USDB の論文 (PRC74(2006)034315) にすべての要素が書いてある。このファイルより、各軌道の SPE は
- となる。
Jπ = 0+ の場合の計算
- と書くとする。計算で使う TBME を抜きだせば
- となる。これより Hamiltonian matrix elements は
- となり、Hamiltonian matrix は
と書ける。この行列を対角化すると (ROOT での対角化はこのマクロを実行)、固有値が以下のように得られる。
- これらは、以下の Nushell の計算結果と完全に一致する。
Interaction file information from go.mit spe taken from first line in *.int file Interaction spe w 1.6466 -3.9478 -3.1635 N name Njtp T E(MeV) J Ex(MeV) (* for yrast) 1 b0202w 1 1 -12.171 0 + 0.000 * 2 b0202w 2 1 -7.851 0 + 4.320 3 b0202w 3 1 1.964 0 + 14.135
Jπ = 2+ の場合の計算
- J = 2 である状態を選び、
- と書くとする。これより、
となる。この行列を対角化すると (ROOT での対角化はこのマクロを実行)、固有値が以下のように得られる。
- これらは、以下の Nushell の binding energy の計算結果と完全に一致する。
Interaction file information from go.mit spe taken from first line in *.int file Interaction spe w 1.6466 -3.9478 -3.1635 N name Njtp T E(MeV) J Ex(MeV) (* for yrast) 1 b4202w 1 1 -9.991 2 + 0.000 * 2 b4202w 2 1 -7.732 2 + 2.259 3 b4202w 3 1 -2.706 2 + 7.285 4 b4202w 4 1 -1.243 2 + 8.748 5 b4202w 5 1 3.522 2 + 13.513
Jπ = 1+ の場合の計算
- J = 2 の場合の計算とほぼ同じ手順となる。J = 1 である状態を選び、
- と書くとする。これより、
となる。この行列を対角化すると (ROOT での対角化はこのマクロを実行)、固有値が以下のように得られる。
- これらは、以下の Nushell の binding energy の計算結果と完全に一致する。
Interaction file information from go.mit spe taken from first line in *.int file Interaction spe w 1.6466 -3.9478 -3.1635 N name Njtp T E(MeV) J Ex(MeV) (* for yrast) 1 b2202w 1 1 -1.348 1 + 0.000 * 2 b2202w 2 1 -0.830 1 + 0.518
メモ
武藤さんの講義資料の中では上記の USD 相互作用を用いている。この有効相互作用の two-body matrix elements は B. H. Wildenthal, Prog. Part. Nucl. Phys. 11, 5 (1984) にすべての要素 (63 個) が書いてある。ちなみに元の論文では USD 相互作用という名前は出てこないようだ。また B. A. Brown and B. H. Wildenthal, Annu. Rev. Nucl. Part. Sci. 38, 29 (1988) では W 相互作用という名前が使われている。しかし USDA, USDB 相互作用の論文 (PRC74(2006)034315) では USD interaction と言っている(1個所だけ)。