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共鳴状態

共鳴状態

  • 原子核の共鳴状態 (resonance state) は連続状態 (非束縛状態) のうちポテンシャル内の波動関数の振幅が大きくなる状態。連続状態の軌道角運動量 l が 1 以上の場合、粒子 (ここでは中性子を仮定) が感じる有効ポテンシャルは引力ポテンシャルと遠心力ポテンシャルの和であり、引力ポテンシャルの縁に壁が出来る。これを遠心力バリアと呼ぶ。遠心力バリアの頂点のエネルギー以下で (?) 波動関数の固有エネルギーを変化させて時間に依存しないシュレディンガー方程式を解いたとき、波動関数がポテンシャル内に多く留まり、ポテンシャル内の波動関数の振幅が大きくなる解が存在する場合がある。このうように、特定の固有エネルギーに対して波動関数の振幅が大きくなることを共鳴と呼び、その状態 (解) を共鳴状態と呼ぶ (たぶん)。

  • 31Ne の場合

    • 31Ne の束縛状態と 1f7/2 の共鳴状態を計算し、波動関数を示す。浜本さんの 31Ne の論文 (PRC81(2010)021304(R)) のパラメータを用いて、束縛状態と 1f7/2 の連続状態を計算すると下図のようになる。

      • mov_ws_res_ne31.gif

      • (図の作成: ROOT 用ファイル (plot_ws_res.C) を使用。MathMore ライブラリをロードし、ACLiC でコンパイルして実行。さらに出力された大量の gif 画像を convert コマンド (convert -loop 0 -delay 10 ws*.gif mov_ws_res_ps_ne31.gif) で gif アニメに変換。)

    • ここで、Woods-Saxon potential の深さは -39 MeV とし、太線が Woods-Saxson ポテンシャル、点線が f 軌道 (l = 3) の有効ポテンシャルを表す。このとき、束縛状態は 1s1/2, 1p3/2, 1p1/2, 1d5/2, 2s1/2, and 1d3/2 軌道の 6 状態となる。1f7/2 軌道は束縛状態とならないが、εc = 2.40 MeV のところに共鳴状態を作る。共鳴状態が遠心力バリアの高さの下にあることが分かる。

  • Phase shift
    • 共鳴を起こすエネルギーを定義する場合、波動関数のフェーズシフトを用いて定義する。フェーズシフトはエネルギーの関数であり、この値が π/2 となるエネルギーのとき、ポテンシャル内の波動関数の振幅が極大となり、共鳴状態を作る。フェーズシフトは波動関数がポテンシャルにどの程度引き込まれているかを表し、ちゃんと定義すると、次のようになる。ウッズサクソンポテンシャルの深さがほぼ 0 となる場所では、遠心力ポテンシャルのみを考えればよく、シュレディンガー方程式の解は球ベッセル関数 jl(kr) と球ノイマン関数 nl(kr) を用いて

と書ける。