近年の重イオン加速器における不安定核ビームライン技術の向上に伴い、 中性子(陽子)ドリップライン上の不安定核を高強度・ 高純度の二次RIビームとして取り出すことが可能となった。 これにより、安定核領域から遠く離れた中性子(陽子)過剰領域の 核構造の研究が急速に進展しつつある。特に軽い中性子過剰領域では、安定核 領域には見られなかった現象が発見されている。その現象の一つに「中性子ハ ロー核」があげられる。この核は、通常の原子核密度を持つコア核と、そのま わりに非常に弱く束縛された中性子が薄く広がっているハローと呼ばれる構造 をとるものである。 そのハロー核のなかで、二中性子によってハロー構造をとるものが確認されている。 この核は構成要素である「コアと一中性子」又は「二中性子」では束縛せず、 「コアと二中性子」という三体でのみ束縛し原子核を形成する。この特殊な三 体系の束縛核は「ボロミアン核」と呼ばれており、その束縛構造は詳細には解 明されていない。そこで本研究ではボロミアン核14Be について、そ の構成要素である非束縛核13Be の共鳴状態の特定とその質量測定 を目的とした研究を行った。 実験では二次ビームとして得られた70.18[MeV/u] の14Beビームを炭 素標的に入射し、一中性子ストリッピング反応を起こさせる。これにより形成さ れた13Beは非束縛核であるため、直ちに12Be と 一つ の中性子 に分解する。この放出粒子の運動量を磁気スペクトロメーターおよび、 中性子カウンターによって測定し、それらの運動量より12Be+nの不 変質量を導出した。得られた相対エネルギースペクトルより共鳴状態の探索を試 みた。その結果、s波中性子と12Beの連続状態を示しており、共鳴状 態は観測されなかった。このことは、14Beの価中性子はs軌道部分が 大部分を占めており、遠心力ポテンシャルがないため13Be の共鳴状 態を形成しなかったと解釈される。また、得られた12Be-n 間の散乱 半径 aが、 a = -0.76 ± 0.07 [fm] と短いことから、その有効核力が小さいことを意味していると思われる。 この結果は14Be の束縛メカニズムを探る上で重要である。 |