計画研究

A01 クォーク階層とハドロン階層を繋ぐ動的機構

研究代表者:
志垣賢太(広島大学・理学研究科・准教授)

スイスCERN研究所において国際共同実験研究ALICEを推進し、高エネルギー原子核衝突によりクォークがハドロン中への閉込から解放されたクォーク・グルーオン・プラズマ相を生成して、解放クォーク少数系の挙動および再ハドロン化の動的機構を解明する。高温解放クォーク相の生成と再ハドロン化に伴い、強相関クォーク対凝縮が変化し、カイラル対称性回復現象が期待される他、クォーク間力のボトムクォークまでを含むフレーバ依存性、クォーク再結合過程による新形態ハドロン生成など、他の実験手法では実現できない極限状態からの特徴的な稀事象の情報を通して、クォーク層とハドロン層を繋ぐセミ階層クラスターを探究する。2021年からのLHC加速器第3期運転に向け、主飛跡検出器高度化、新規前方検出器導入、データ収集系高速化を主導し、従来にない高精度高統計で広い運動学領域を覆う新段階の測定により上記物理目標を実現して、本領域が研究対象とする階層構造の基本層の探求を担う。

A02 クォーククラスターで読み解くクォーク・ハドロン階層構造

研究代表者:
大西宏明(東北大学・電子光理学研究センター・教授)

本計画研究では、(1)J-PARC 高運動量ビームラインに重バリオンスペクトロメーターを建設し、1 個のチャームクォークを持つバリオンΛc、および、2 個のストレンジクォークを持つバリオンΞの励起状態に関するスペクトロスコピーを実施し、その質量スペクトル・生成断面積・崩壊比の精密測定から、クォーク層からのハドロン形成の鍵となるダイクォーク相関の存否、およびその役割を明らかにする。また、(2)SPring-8 LEPS2 の大型ソレノイド・スペクトロメーターの整備、およびレーザー増強による光子ビーム高度化を実施し、新形態ハドロン候補(ペンタクォーク、およびΛ(1405))の生成、崩壊の測定からこれらの粒子がペンタクォーク状態もしくはハドロン分子状態なのかについて結論を出す。これらの結果を総合し、ハドロン生成に関する閾値則を探る。

B01 ストレンジ・ハドロンクラスターで探る物質の階層構造

研究代表者:
田村裕和(東北大学・理学研究科・教授)

ストレンジクォークを含む様々なハドロンのクラスターや2 体系をJ-PARC で実験的に調べ,色荷0(白色) のハドロン同士の間に相互作用が生まれる仕組みを解明するとともに, セミ階層と考えられる中間子・バリオンクラスター[K-p] の階層分離度を調べる。(1) バリオン間相互作用:Σ-p,Λ-p 散乱実験, および4ΛH, 7ΛLi 等のΛハイパー核の線分光・磁気モーメント測定・弱崩壊測定を行い, ΣN, ΛN, ΛN-ΣN 相互作用を詳細に調べる。また, Ξ-n 束縛状態(電荷が負の原子核)を探索し, ΞN 間力の情報を得る。さらに, 共鳴状態として存在が予想されているH ダイバリオン(6 個のクォークが閉じ込められた粒子)を発見しその構造を調べる。(2) 中間子・バリオンクラスターの構造:ボーズ粒子である中間子とフェルミ粒子であるバリオンとの2体系は, ストレンジクォークが入るとπΛ, πΣ, KbarN (K-p) などの複数チャンネルが結合した共鳴状態を生じる。Λ(1405) は中間子(K-) とバリオン(p) がゆるく束縛した分子的状態であるとの理論的予想もある。そこで, これまでに調べたΛ(1405), K-pp 核に加えてK-ppp 核の性質を調べ, これらの構造から[K-p] という中間子・バリオンクラスターの階層分離度の情報を引き出す。

B02 エキゾチック核子多体系で紐解く物質の階層構造

研究代表者:
中村隆司(東京工業大学・理学院・教授)

原子核層の「セミ階層」を形成すると期待されるダイ中性子(強相関中性子対)の多体系「多 中性子クラスター」、および、原子核層特有の「力」で階層をつなぐ鍵を握る「3 体核力」の2つの研究に挑む。1)多中性子クラスターの研究:理研RIBF で得られる世界最高強度の不安定核ビームを用いて、中性子数が非常に過多となった酸素同位等を陽子準弾性散乱実験により生成し、その核表面に現れると予想される多中性子クラスター、4n 系(テトラ中性子)、や6n 系(ヘキサ中性子)の世界初観測をめざす。これらは2n(ダイ中性子)の多体系となる可能性があるが、分離度、閾値則との関係、ダイ中性子凝縮を調べ、ダイ中性子セミ階層の全容を明らかにする。2)3 体核力の研究:クォーク系層から原子核層の分離メカニズムをひもとく鍵である3体核力の実験研究を行う。特に、i) 少数核子系の新たな実験プローブを開発し、実験検証が不可能であった3 中性子(3陽子) 間に働く荷電スピン三重項の3体核力を定量的に明らかにし、更に、ii) 3 体核力効果が理論的に示唆されている(p, pN) 反応のスピン観測量完全セット測定を実現し、核媒質中における核力を決定する。

C01 極低温原子で紐解く階層横断エキゾチック物性現象

研究代表者:
高橋義朗(京都大学・理学研究科・教授)

近年極めて高度なレベルに達している冷却原子系の制御技術のなかでも、特に、原子間の相互作用を磁場により任意かつ精密に実時間制御するフェッシュバッハ共鳴法により、様々な可能性が拓かれつつある。本研究では、冷却原子系として極めて大きな質量比を有する超低温原子混合系を実験的に生成し、その特異な性質を実験的に解明することにより、クラスター階層の物理の理解を深化させることを目標とする。特に、重原子と軽原子間の相互作用を磁場により制御するフェッシュバッハ共鳴法を開発し、まず「普遍的なクラスター状態」としてのエフィモフ3 量体を観測しこの系の「分離度」の定量的理解さらには「閾値則」としてのエネルギー構造の解明、また軽原子との相互作用により重原子間に発生する「有効的力」の観測およびそれに基づく「強相関フェルミオン対」の「凝縮相」としての超流動「相転移現象」の研究、および、アンダーソン直交崩壊として知られる非平衡ダイナミクスに現れる「普遍現象」の解明、などを目指す。これにより、階層をつなぐ共通物理現象の発見と解読、少数粒子相関などの研究、階層分離度の定量的分析、階層構造を特徴づける「相転移、クラスター、力」の理解を深めることに貢献する。

C02 物質の階層変化および状態変化に伴う普遍的物理

研究代表者:
堀越宗一(東京大学・大学院理学系研究科(理学部)・助教)

C02班の目的は、「冷却フェルミ原子気体の高い操作性を駆使し、量子クラスター形成としてのフェルミ粒子対形成や、自由度の中和過程としてのフェルミ対のボソン化、および、そうした現象に起因する量子多体効果の全容を解明すること」である。2成分フェルミ原子気体を実験的に準備し、様々な熱力学量や磁気感受率、粘性率などの輸送係数を、系の自由度(散乱長・有効距離・分極率・温度)を制御しながら幅広いパラメータ空間内で測定する。そして、実験結果の背景にある「量子クラスター現象の普遍的な物理法則」を、凝縮系理論、原子核理論を駆使し解き明かす。更に、この系を量子シミュレーターとして活用、解明した普遍的物理法則の知見も援用し、本新学術領域がカバーする他の物質階層におけるクラスター現象の解明にも貢献することを目指す。

D01 第一原理計算から明らかにする階層構造の発現機構

研究代表者:
肥山詠美子(九州大学・理学研究院・教授)

ハドロン・原子核・原子・分子間の階層の物理系に対して第一原理計算を進め、物理の階層構造ができあがるメカニズムを解明する。同時に、これらの分野間の研究融合を深め、それぞれの成果を相互に利用することにより、各分野および領域全体の発展を促進する。具体的には以下の通りである。ハドロン系では、量子色力学の第一原理計算によりハドロン間相互作用を決定する。この相互作用を用いた少数多体系の精密計算(6体問題まで)を原子核・ハドロンの多体系に適用し、閾値則に則したクラスター形成の発現機構を明らかにする。また、強相関フェルミ粒子対について、研究を推し進める。同様に原子・分子系で原子核の自由度を取り入れた第一原理計算を進め、原子核・ハドロン系との物理的相違点、類似点を明らかにする。同時に、3分野のセミ階層を研究することからクラスターの分離度を明らかにする。以上の研究によって得られる知見を、実験研究にフィードバックし、実験研究班の研究推進に貢献するとともに、本領域の研究目的を達成する。研究計画班メンバーは定期的に情報交換を行うことで、分野間融合を図り上記の目的を達成する。